演劇・お芝居・俳優

2018年9月 4日 (火)

ニール・サイモンさん天国へ

2018年8月26日、劇作家ニール・サイモンが天国へ旅立たれました。

ニール・サイモン作の作品を舞台ではじめてみたのは「ブライトン・ビーチ回顧録」。その後何本かの戯曲を読み、小難しくなく万人がちゃんと楽しめるお芝居のお手本として楽しませていただいてきました。
(酒井洋子さんや鳴海四郎さん他諸氏の素晴らしい翻訳のおかげです!)

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実際に舞台で見たのは何と言っても加藤健一事務所での上演作の数々でしょうか。戯曲という文字から入ったものが実際の舞台になるのは魔法のようで、ストーリーそのものの面白さはもちろん、そこにあるアメリカの空気感も魅力的で、加えて役者の技術力と積み重ねた稽古を思い、若き日の私は演劇の世界にぐいぐい引き込まれていきました。

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そして、三谷幸喜さん。初期の舞台の緻密で計算された笑いとその品のよさは明らかにニール・サイモンの影響で、ご自身もニール・サイモンに関してはあれこれと話したり書いたりしてこられました。
(実際にお目にかかられたテレビ番組もありました。まあ、これに関しては興奮し、スベりまくった三谷さんのふるまいが失礼すぎて、もう思い出したくありませんが。愛と尊敬ゆえと割り引いてもあれはひどい番組でした)

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訃報を聞いて真っ先に思い浮かべたお二人が、朝日新聞紙上、三谷幸喜さんは「ありふれた生活」の連載エッセイ888回中で、加藤健一さんは9月3日付けの文化・文芸欄でのインタビューの形で追悼されました。
どちらもそれぞれの方らしい内容でとても良かった。
三谷さんの888回という番号の回がニール・サイモンの追悼文になることに「縁」を感じ、加藤さんが「情」というものをニールサイモンに感じながら上演されていたという部分が印象的でした。
また、和田誠さんの肖像イラストも素敵でした。和田さんはイラストレーターとして以外に映画に関する著作も多く、その博覧強記ぶりは言うまでもありません。色々思われながら書いたイラストだったと拝察します。

ニール・サイモンさん、極東の演劇少女(と、その成れの果て)を楽しませてくださってありがとうございました。どうぞ安らかに。

2017年8月21日 (月)

角座 日中はなしの会

暑くてどこにも行きたくないけどお休みなのに出かけないのもちょっと残念…。
と、ブックオフのCMソングみたいな気分になって、考えた挙句落語に行って来ました。
クーラーの効いたお部屋で座っているだけで楽しめて、お財布にもぐっと優しいなんていいじゃありませんか。

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場所は道頓堀角座。繁華街ド真ん中のこじんまりとした小屋です。
ここで「角座 日中はなしの会」というお昼の落語会が定期的に行われています。「にっちゅうはなし」ではなくて「ひなかはなし」なんですね。

私とおなじように涼しいところで楽しいことをと考える人が多いのか盛況で、開演時には満員でした。

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日中はなしの演者は日替わりで、毎回六題楽しめます。
今日は

桂寅之輔 「犬の目」
笑福亭飛梅 「延陽伯」(たらちね)
笑福亭喬介 「饅頭こわい」
笑福亭鉄瓶 「骨つり」(野ざらし)
仲入り
森乃石松 「軽業」
笑福亭喬若 「替り目」…かな。敬称略。演目は書かれたものがなかったので多分合っていると思いますが違っていたらご容赦ください。

持ち時間はまちまちですが、皆さん枕長めでしたかね。
客席はほとんどご年配でしたが小学生がちらほら混じっていました。「饅頭こわい」なんてのがあったのはもしかしたらお子様客を見ての選定だったかも知れません。
お子さんに落語は想像力が要るし、出てくる単語がわからないし、けっこうハードル高いかも。
屏風・鉄瓶・長屋がぱっとわかり、仙台平の袴で正装を理解し、蜆売りで服装やら持ち物を思い浮かべるなんて高校生でも難しいかも知れず、そう思うと噺家さんも説明が色々必要になるわけで、増長にならないように説明する、その匙加減は難しかろう。
米朝師匠は長屋のことを「アパートをパタッと倒したもの」と言っておられました。今日のお子さん方は楽しめたかな?

喬介さん、ちょっと先代の文枝さんみたいなやわらかい感じが個性的。
鉄瓶さん、パワフルで声デカい。汗だくで熱演。押しが強いのが武器なのでしょうか。
喬若さん、今日の顔ぶれの中でいちばん好き。お酒を飲みたくなりました。お召し物も素敵。この方もっと聞きたいなぁ。

「日中はなしの会」は9月・10月もあるようです。
久しぶりに生の落語聞いて楽しゅうございました。

2017年3月 9日 (木)

井之上隆志さん

舞台友達からのメールで井之上隆志さんの訃報を知りました。
ちょっと動揺しています。

映像の仕事としては「渡る世間は鬼ばかり」内の「おやじバンド」の方というのが一番通りがいいのでしょうか。

でも、その前に「劇団カクスコ」というグループがありましてね。
男性6人組で、設定は変われどやってることや舞台上の空気はいつも同じ、でもその世界観がたまらなく素敵な劇団だったんですよ。
井之上さんはその6人のうちのお一人でした。

どぎつさやあざとさや媚とは対極にある、落語のようなあたたかい話と笑い。
練りに練り、稽古に稽古をつみあげて、それを語らずにさらっと見せるプロ集団。
会話のテンポとか間が絶妙で、だれも傷つけることない幸せなお話に6人のアカペラ。
このアカペラが決して上手くないのにとにかく魅力的で、舞台で聞くたびに誰の何と言う曲かCDを探して聞いたりして、私の試聴ジャンルを広げるきっかけにもなってくれました。

舞台の立て込みからご自分たちで行い、大工さんさながらに道具を使い、汚しをかけて作りこまれたセットを、開演を待ちながら隅々まで見るのは楽しかったですね。
小さな小屋にこだわり、紀伊國屋演劇賞というビッグタイトルを得たあともなんにも変わらない。
たしか賞金は、「どう使おうか?」という相談を繰り返しているうちに皆で飲み屋さんで飲み切ったという話でした。

リーダーの中村育二さんと井之上隆志さんの「歌会」と言われる場面では
昭和歌謡やフォークソングを育二さんがギターを引きまくるのに合わせて井之上さんが積み上げた雑誌をバカスカ叩いて歌いまくるシーンが名物になっていました。
この場面はお二人とも「素」で楽しんでいると言っておられて、観客も皆楽しみにしていたシーンです。

劇団は、メンバーのお一人近藤京三さんが「娘を田舎で育てたいので劇団を辞める」と決めたのをきっかけに2002年にあっさりと解散してしまいました。
私、最終公演の大阪はほぼ全公演見ました。
東京に遠征してシアタートップスでも見ました。
ファンは皆、解散は惜しいなぁと言う一方で理由が彼ららしいなぁと苦笑していましたっけ。

再結成は彼らの美学としてないだろうなと思いつつも、老人ホームでの6人なんて設定でお年寄りになったメンバーが集まるのを想像するのはちょっと楽しかったです。ですがその夢想すらできなくなってしまった。

井之上さん、どう考えても早いですよ。

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写真は楽屋で頂いたサイン。
普段はどなたにもサインをお願いしたりしないのですが、この時だけは自分の記念に撮って持っていた新宿シアタートップスの看板写真に頂いてしまいました。
「あれー?これなんの写真?」とすっとんきょーな声で聞かれたのを思い出します。
井之上隆志さん、残念です。どうぞ安らかに。

2017年2月13日 (月)

井之上隆志さん休演…

大阪新歌舞伎座の公演ポスターが駅に張り出してあります。
4月公演は藤山直美さんがミス・ワカナを演じる「おもろい女」。

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出演者の皆さんの写真の中に、元劇団カクスコのメンバーの井之上隆志さんがいます。居並ぶ皆さんのすっとんきょーな表情の中でも抜きん出て可笑しい。
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解散するまで劇団カクスコの大ファンだった身としては、毎日前を通るたびにその表情を横目で確認してお腹の中でくすくすと笑っておりました。

井之上さんは昨年体調をくずして舞台を降板されるという出来事があったので、そこから無事に回復されたようで良かったと思っていたのです…が。

2月7日付けの公式HPで3月の中日劇場・4月の新歌舞伎座を「体調不良により休演」されることが発表されました。

うーん。
所属事務所のHPも見てみましたがそれ以上の情報は無し。
陰ながらご回復を案じております。

※2月18日追記
いつも駅で見ていたこのポスターが今日から別のものになりました。
掲載期間が終わったのかな、これから公演なのに不思議なことだと思っていたら、主演の藤山直美さんがご病気とのことで、3・4月公演全日程中止となりました。ショック…。
どうぞじっくり直してください。贔屓の一人としてご回復をお待ちしております。

2016年5月16日 (月)

蜷川幸雄さん

蜷川幸雄さんの訃報を聞いて以来、拝見した舞台を思い出しています。
何本も見ていますが、中でも印象深かったのが3本。

「仮名手本忠臣蔵」
新神戸オリエンタル劇場のこけら落とし公演でした。
パンフレットを出してみたら、チケットがはさんであり88年の10月のことだったと確認できます。
忠臣蔵の全段上演で、当然とても長かった。
今思うと、群集処理や絢爛たる色彩や物語のスピーディーさなど、蜷川演出の特徴がとてもよく出ている舞台だったように思います。
こけら落とし公演だということで、観客の望む「ザ・ニナガワ」を見せてやろうという意図だったのかも知れません。

戸無瀬と小浪の道行で天井から椿(多分)の花がポタリポタリと落ちてきたことを覚えています。
赤と白と黒の場面。これからの悲劇の暗示だったのでしょう。綺麗なシーンでした。
鳴き女が登場して、その中で物語が進んだと思います。これはコロシアムを意識したのかシェイクスピア演劇のようでした。
死に向かって突っ張る「忠臣蔵」だと思った記憶があります。

「身毒丸」
藤原竜也さん目当ての観客が多かったと思いますが、私はどちらかというと白石加代子さん目当て。
アングラのあのムズムズするような魅力を商業演劇に変身させ、エネルギッシュで素晴らしい舞台でした。
蘭妖子さんが素敵でした。後に思わずDVDを購入。
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そして、テレビ観劇でしたが「なぜか青春時代」
別れた仲間たちと約束した15年後の再会の為ビアホールを訪れる女。そのビアホールの女主人。学生運動への追憶。
そりゃもう夏木マリさんと松本典子さん(アイドルの方では無くて、木冬社の松本さんね、作者の清水邦夫さんの奥様)がすごすぎました。

この作品に感化されて作中印象的だったホイットマンの詩集を買い「草の葉」を暗誦するわ、劇中ここぞというシーンで流れる(ほとんど反則ワザ)プロコル・ハルム「青い影」を聞いては陶然とするわのハマりっぷりでした。恥ずかしい。
でも、今でもこの曲を聞くと劇中世界に引きずられるようです。

去年、寺島しのぶさんのブログで、蜷川さんが車椅子に乗っているお姿を見てあのパワフルな方がと胸が衝かれる思いでした。
ご本人も無念でしょうが、残った演劇人の皆様の喪失感もいかばかりかと拝察します。
たくさん楽しませていただいてありがとうございました。
名も無き観客の一人からお礼を申し上げます。
ご冥福をお祈りします。

2015年8月22日 (土)

山本耕史くんがご結婚!

夜9時前でしたかね。
ネットでとあるところを見ていましたら、山本耕史くんが堀北真希さんと結婚とありました。
まるっきりデマだと思い、「またまた~」と苦笑しながらも確かなソースをチェックしたらヤフーの速報に挙がっているではありませんか。
あぁ、びっくりした。

6月に共演を終えて8月に同居。
若者は行動的ですなー。うらやましい限りです。おめでとうございます。

つい先日、吉川徹さんが亡くなられて、山本くんはさぞかし辛いだろうなと勝手に胸を痛めていたのですが、精神的に支えてくれる女性がいたのだと思うと少し安心しました。

関係者のコメントの中で一番読みたいのは両者演出している白井晃さんかしら。戸田恵子お姉さまのブログも楽しみ。

山本君、現在読売演劇大賞男優賞にノミネート中です。
あんなに上手いのに、いまひとつ賞とはご縁の無かった彼です。
幸せついでにもらっちゃえ!

いい年の男性をつい「山本くん」と言ってしまうのは、このお役があったからです。パンフの中身を載せるのはマナー違反かもしれませんが、戸棚から引っ張り出して来ました。
ご祝儀がわりにお許しいただいて、「レ・ミゼラブル」のガブローシュ少年をパチリ。
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ますますのご活躍を。

※戸田姐さん、コメント出ましたね。
ほくそ笑んでいる悪い女。いいですね。

また、スマスマの香取くん、冒頭のコメント部分拝見しました。
「オレの山本耕史をヨロシクお願いします」でしたかね。
さすが、期待されているものをわかっておられます。

2015年8月14日 (金)

ソワレとレプリーク

要らない本やファイル類を整理しました。
ここしばらく見ていない、使っていないものは思い切って破棄することにしました。
こういう作業って調子づくとどんどん拍車がかかります。
大汗かいて、あれこれ捨て続けるなかでちょっと手が止まったのが演劇グラビア雑誌の山。

単行本は廃棄してもまた手に入ります。仮に絶版になったとしても、図書館を利用すれば大抵のものは読めます。
が、「雑誌」というのは手放したら再度読むのはとても難しくなるんですね。
毎回部屋の片づけをするたびにその考えが頭をよぎり、雑誌だけはつい置いておいてしまうのです。

「ソワレ」は創刊号からすべてありました。
写真に写っている表紙だけでも松たか子さん、天海祐希さん、本田美奈子さん。つい中を見たくなります。
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「レプリーク」は興味のある号だけ買っていたのですが、それでも中々の冊数があります。
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世の中には欲しいと言ってくださる方も居るのでしょうね。送料だけ持ってくださるならどこにでもまとめてお送りしますが、そのアクションをおこすのも面倒です。オークションはもっとめんどう。迷います。

パラパラと見て、好きなページだけ切り取ってファイルする案もよぎりましたが思い切ってヒモをかけました。捨て捨て!

来週の紙ゴミ収集日までに気が変わったら救済に入る予定。
若干のモヤモヤを抱えつつも、いちおうスッキリしました。

2015年3月22日 (日)

生演奏音楽劇「ザ・フルーツ」

生演奏音楽劇「ザ・フルーツ」。

世の中の流れに乗り損ねた男たち(バンドマン)を通して、生きることの哀しみと可笑しさ、そして美しさを描く完全オリジナル楽曲生演奏音楽劇「ザ・フルーツ」

作・演出/中島淳彦
出 演 /春風亭昇太、六角精児、井之上隆志、中島淳彦 

一体どういうものなのか、面白いのかそうでないのか、なんだか想像のつかない感じで少々不安ではありますが、井之上隆志さんがお元気だと分かっただけでうれしいのでありました。
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カクスコ関係に関しては激甘な私…。

2015年3月20日 (金)

桂米朝さん

桂米朝師匠が亡くなられました。
お年ですし、そう遠くない将来に聞くことになるかもとは思っていたのですが、夜のニュースで知ったときはやはり胸を突かれました。

何度か高座を拝見したことがあります。幸せなことです。
私は「たちぎれ線香」が一番好きで、小糸ちゃんの描写ではいじらしさにぼろぼろと涙を流したものです。

もう20年くらい前、いや25年にもなるでしょうか。
あるテレビ番組の公開録画に出かけたことがあります。小さなスタジオに座布団を並べ、落語あり、漫才ありの大阪の番組でした。

オープニングの挨拶の場面などをぶつ切りで録画した後、しばらく機材調整のために観客を待たせたまま休憩時間がありました。
そのときに米朝師匠と、同じく出演者の夢路いとし、喜味こいし師匠が隅っこで立ち話をされていて、そのお三方のご様子が本当に和やかで楽しそうで、ファンとして見惚れたという大事な思い出があります。

何をお話になっていたかはもちろん分からないのですが、上方の品を感じさせてくださる師匠方の幸せなお時間のおこぼれに与った気分でした。

いとし師匠のときもこいし師匠のときも、この出来事を思い出し、また今夜も思い出しています。

枝雀さん、吉朝さんが天国でお迎えしてくださることでしょう。
ご冥福をお祈りします。

2014年11月 3日 (月)

高畑淳子さんの紫綬褒章

高畑淳子さんが2014年秋の紫綬褒章受章だそうで、おめでとうございます。
本当に上手い女優さんですよね。

私は加藤健一事務所の作品に色々出ておられるのを見ていてファンに
なりました。
「おかしな二人」「レンド・ミー・ア・テナー」「第二章」…。
中でも「セイムタイム・ネクストイヤー」のドリスは何度見たでしょうか。
芝居の上手さ、技術、高畑さんご自身のキャラクターに魅了されて、
いささかも飽きることはありませんでした。
もう好きで好きで私の生涯ベスト10に入る舞台です。

テレビ観劇ですが「越路吹雪物語」の岩谷時子もすごかった。
「愛の賛歌」の歌詞を言葉にするだけで、なぜあんなに揺さぶられるのか。

そうそう、ドラマ「Mother」での病床の田中裕子さんとのやり取りなんて
未だに忘れられません。
自然で何気ない芝居なのに二人とも、うなるほど上手かった。

声のコントロールがすごいんですよね。

劇団青年座を背負って立つ方でもあります。
下世話な話ですが、今の高畑さんなら、劇団をやめて芸能プロダクションに移籍したほうがずっとお金になるはずです。
それでもずっと青年座にいらっしゃるのはなにか考えがおありなのかなと。
まぁ、全く想像ですが、そのあたりにも色々気概を感じるのです。

ほんとうにおめでとうございます。
ご健康でますますご活躍されますよう。