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2017年9月17日 (日)

玉村豊男 「料理の四面体」

玉村豊男「料理の四面体」読了。
いやー、面白かった。夢中で楽しみました。

論説書、分析書と言うには面白すぎるし、エッセイというには論理的に過ぎる。こういう本はなんと呼べば良いのでしょうか。

世界の料理を作り方から分類しつつ、最終的に料理法の方程式を導きだしていく形の本です。
とは言え硬い内容ではなくて、上にも書いたようにものすごく面白い。
私は通勤電車の中で何度もフフッと鼻息を漏らして笑っておりました。

玉村さんの著書はずいぶんと読んでいますが、明晰な頭脳から繰り出される上品なユーモアは本当に好き。
加えて、相手に対する敬意を忘れない、舐めてかからないところが安心できるんですね。
(都会を離れて農園をひらき、ワイナリーを作るまでの記である「種まく人」シリーズが素晴らしい。何度も読み返しています)

「料理の四面体」は初版が1980年だそうで、なかなか古い本になりますが、中身はまったく古くないです。
頭の中がサクサクと整理されてていく快感が楽しめる良書。
読書好きな子供さんに、物語を楽しむことからもう一歩進んで、論理的に思考することを知ってもらうにも最適な本だと思います。
この中公文庫の表紙は初版の復刻だそうで、これもいいデザインです。単行本には「トラフグのごとき魚」も書いてあったそうで、文庫デザインには採用されていないのが唯一残念かな。

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ところで。

この本の冒頭部分にアルジェリアでの羊肉シチューに出会う記述があります。
玉村氏ご本人も“印象深いという読者が多かった”と述べる部分でありますが、ここを読みながら私の頭の中で何かがチカッと点灯したのですよ。

しばらく考えていてあっ、とひらめいたのが栗本薫の「グルメを料理する十の方法」。
こちらは食べ歩きが趣味のでっかいアザミさんと色っぽいえりかちゃんが殺人事件に挑むという全くの娯楽作品であるものの、料理の描写や食をとりまく人間表現がとにかく秀逸な一冊なんですね。
エンターテイメントはかくあるべしという、栗本さんのいいところが存分に楽しめるという本です。

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この中に、アザミさんの部屋でふたりが料理本を読むシーンがあるんですよ。
物語の中の登場人物が書いたという形で二人の本の一部が登場するんですが、描かれる内容も文体そのものもその本の著者として見事にガラッと書き分けているという「アンタは北島マヤかっ」と思うほど栗本さんの天才っぷりを感じる部分なんです。
このうちのひとつがこの「料理の四面体」の冒頭の羊肉シチューの場面だと思うなぁ。

もちろん写しであるといっているわけでは断じてありませんよ。
文章から受ける印象~若者のやり取り、調理の描写、料理途中の観察から美味へ~の流れや後日挑戦してみるところまで、全く違う文章だけど、ヒントにしたんじゃないかと思ったんです。
読み手が受ける印象のみ酷似させている感じを受けます。
「料理の四面体」が1980年、「グルメを料理する十の方法」の奥付をみると昭和61年、えぇーっと1986年。
栗本さんご自身も料理好きで、無類の料理本・グルメ本好きでしたから、読んでる。絶対読んでますって。
ヒントというか、色んな文体や視点を変えて書くのなんてお手の物だった氏のことですから、ひとつの愛読書として文体と共に頭に蓄積させていたんじゃないかなと想像するわけです。

どうなんでしょうね。いつか私が天国に行ったら先輩住民の栗本さんを訪ねてお聞きすることにしましょう。

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