井之上隆志さん
舞台友達からのメールで井之上隆志さんの訃報を知りました。
ちょっと動揺しています。
映像の仕事としては「渡る世間は鬼ばかり」内の「おやじバンド」の方というのが一番通りがいいのでしょうか。
でも、その前に「劇団カクスコ」というグループがありましてね。
男性6人組で、設定は変われどやってることや舞台上の空気はいつも同じ、でもその世界観がたまらなく素敵な劇団だったんですよ。
井之上さんはその6人のうちのお一人でした。
どぎつさやあざとさや媚とは対極にある、落語のようなあたたかい話と笑い。
練りに練り、稽古に稽古をつみあげて、それを語らずにさらっと見せるプロ集団。
会話のテンポとか間が絶妙で、だれも傷つけることない幸せなお話に6人のアカペラ。
このアカペラが決して上手くないのにとにかく魅力的で、舞台で聞くたびに誰の何と言う曲かCDを探して聞いたりして、私の試聴ジャンルを広げるきっかけにもなってくれました。
舞台の立て込みからご自分たちで行い、大工さんさながらに道具を使い、汚しをかけて作りこまれたセットを、開演を待ちながら隅々まで見るのは楽しかったですね。
小さな小屋にこだわり、紀伊國屋演劇賞というビッグタイトルを得たあともなんにも変わらない。
たしか賞金は、「どう使おうか?」という相談を繰り返しているうちに皆で飲み屋さんで飲み切ったという話でした。
リーダーの中村育二さんと井之上隆志さんの「歌会」と言われる場面では
昭和歌謡やフォークソングを育二さんがギターを引きまくるのに合わせて井之上さんが積み上げた雑誌をバカスカ叩いて歌いまくるシーンが名物になっていました。
この場面はお二人とも「素」で楽しんでいると言っておられて、観客も皆楽しみにしていたシーンです。
劇団は、メンバーのお一人近藤京三さんが「娘を田舎で育てたいので劇団を辞める」と決めたのをきっかけに2002年にあっさりと解散してしまいました。
私、最終公演の大阪はほぼ全公演見ました。
東京に遠征してシアタートップスでも見ました。
ファンは皆、解散は惜しいなぁと言う一方で理由が彼ららしいなぁと苦笑していましたっけ。
再結成は彼らの美学としてないだろうなと思いつつも、老人ホームでの6人なんて設定でお年寄りになったメンバーが集まるのを想像するのはちょっと楽しかったです。ですがその夢想すらできなくなってしまった。
井之上さん、どう考えても早いですよ。
写真は楽屋で頂いたサイン。
普段はどなたにもサインをお願いしたりしないのですが、この時だけは自分の記念に撮って持っていた新宿シアタートップスの看板写真に頂いてしまいました。
「あれー?これなんの写真?」とすっとんきょーな声で聞かれたのを思い出します。
井之上隆志さん、残念です。どうぞ安らかに。
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