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2017年1月 8日 (日)

中村勘三郎 最期の131日

「中村勘三郎 最期の131日 哲明さんと生きて」波野好江さんの著作。
勘三郎丈が亡くなられた一年後の2013年12月にこの本は出版されました。
そのことは知っていたものの中々手に取る気になれず、それからさらに3年経った今になってようやく読了。

読む気になれなかった理由はいくつかあります。

ファンとして勘三郎さんが居なくなった喪失感が大きく、写真集や芸談ならまだしも、闘病記なんてとても読めないと思ったこと。

そもそも闘病記というものがあまり好きではないこと。
加納朋子さんや中島梓さんのようにプロの力でちゃんと読ませるものは立派な「作品」として成立していますが、過去に読んだ闘病記の中には暴露や医療への恨みに満ちただけで、読み手としてはそれは内々でやれと言いたい読後感のものがあったこと。

まったく個人的に、病院や治療の描写で自分が病を得た時のことや親族の看病を思い出して落ち込んでしまうこと。
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で、今回。
やっぱり読んでいて勘三郎丈の色々な舞台を思い出し、個人的な出来事のあれこれを思い出して悲しくはなりましたが、意外とさっぱりと読み終えました。

周知のことでありますが、奥様である好江さんは成駒屋さんのお嬢様。
ごきょうだいが舞踊の中村梅彌さん、歌舞伎の中村福助さん、芝翫さん(まだ呼び慣れないな)で、中村屋さんとのご結婚により歌舞伎役者のほとんどが親戚になったと当時話題になりました。

そのお二人のなれそめからご夫婦としての日々、勘三郎さんの闘病がこの本の内容となります。
ご夫婦や息子さんたち、お嫁さんからご友人のあれこれや、医療スタッフの動きとともに、薬の名前、出来事の日にちなどもきちんと描かれています。

読み終えて「ここでこうしていれば」「もしこれを選ばずにいたら」となんとも辛いポイントがあるのですが、それは第三者が後になって思うこと。
医師や治療への恨み言や責任転嫁がまったくないこと、後悔もあとがきにちらっと出てくるのみに出来るだけ排している点が見事です。

坂を転がるように悪くなっていく中で、息子さんたちからの肺移植の話まで進められていたという事実には呆然としました。
うーん、これに関してはお医者さんが検討する理由も出て来るので理解できる反面、勘九郎丈、七之助丈の今後を考えるとちょっと待ってと言いたくなります。
それを待たずに手の施しようがない状態になられたためにもちろん実行はされなかったわけですが…。

この本は闘病記、回顧録でありつつ、医師からの説明概要の掲載と主治医へのインタビューもあるので、医療ドキュメントと言える面もあります。
予想していたよりずっと冷静な、きちんとした本でした。
大竹しのぶさん、野田秀樹さんからの文が巻末にあり、これでこの本がぐっと奥行きを増した感があると思います。お二人が応えてくださったことは良かった。

そして、一つ目の病院のインタビュー掲載が病院の規定で見送られたとあるのですが、これはぜひ読みたかったところです。
病院から見ても規定とやらを破ってでも他の病院と並んだほうがなにかと良かったのでは?
欲を言うとお父様がのっぴきならない状態になってからもずっと舞台をこなしておられた息子さんたちの言葉が聞きたかったかな。

そして、奥付まで来て「構成 島崎今日子」とあり、思わず声を上げましたよ。
道理で。
「芸」というもの、その道での「闘い」を理解しておられる信頼できるライターさんだと思っています。この方が手がけられたものでしたか。

改めて勘三郎丈のご冥福をお祈りします。
市井の一ファンに過ぎませんが、お客さんがとにかく楽しくて、勘三郎さんも楽しくて、それを見てまたこちらもうれしくて、発散するエネルギーが熱くて、明るくて、時々やりすぎて、それもまた愛された舞台、まだまだ思い出していますよ。

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