Pen 「いとしの歌謡曲」
雑誌「Pen」の5月15日号、「いとしの歌謡曲」。
松本隆さんのインタビュー読みたさで気軽に手に取ったのですが、ひとまず面白い一冊でした。
「歌謡曲」と言えばどういうものを指すのでしょうか。
私は漠然と
詞と曲はプロの作家におまかせした歌唱専門の人が歌うもので、
老若男女広い年齢層=一般大衆、をターゲットにしていて、
テレビで聞けて街中で自然に耳にして、つい誰もが口ずさむもの。
という感じで捉えていました。
布施明さんとか岩崎宏美さんとか、山口百恵さんとか演歌の皆様。
ごく平凡なイメージだと思います。
ですが、例えば「秋桜」を山口百恵さんが歌えば歌謡曲で、作詞作曲したさだまさしさんが歌えばそうじゃなくなるの?と考えると
このイメージも一気にどうかなとなってしまいます。
歌謡曲ってものごく大きいテーマで、切り取り方は色々可能なのですね。
さて、この特集は表紙からして椎名林檎や宇多田ヒカルのジャケット写真なので、ありきたりな語り方はしませんというのが伝わります。
「はっぴいえんど」が歌謡曲の礎だという視点から松本隆さん、大瀧詠一さんを通して80年代アイドルに記事が展開します。
しかし、「はっぴいえんど」がそれまでの流れを変えた、のではなく「礎となった」と断言してしまうと、それ以前の歌謡曲はどう語るのよという気がします。作り手も多少の無理は承知の上なのでしょうか。
そういうわけで、演歌は全く触れられません。
ニューミュージック・フォークもほとんど切捨て。
70年代をルーツに設定したために、漣健児さんを代表とする和製ポップスも無視です。(←わたしこの世界大好きなんですが)
ザ・ピーナッツやクレージー・キヤッツは?
江利チエミさんのように進駐軍ルーツは?
雪村いづみさんのように和製ジャズ系は?
服部良一さんも宮川泰さんも阿久悠さんも不在ですが、確かにこのあたりまで掘っていくとキリがないわけで、雑誌のターゲット層を想定し限られた紙面のなかで多少の無茶には目をつむると、これもアリかなという特集にはなっていました。
一点、こりゃいかんと思ったのは、73年リリースのアグネス・チャンの「草原の輝き」が80年代と明記されてコラムが展開していくこと。
誰か気が付かなかったのかな。こういうの、惜しいですね。
(読んだときから強い違和感があったので思わず調べました。まさかアグネス・チャンについて検索する日が来るとは…)
紙媒体なのでメロディよりも歌詞寄りに記事が作られています。
そうなると全体を通して改めて「松本隆さん」の存在の大きさが浮き出してくるしかけです。
松本隆さんのインタビューは読み応えありました。
中でも最後の発言、引用は止めておきますが興味深いですね。
あらゆる歌い手の背筋がピッと伸びそうです。
歌の聞き手、ファンの一人としても大注目させていただきます。
♯冒頭で一応「面白い」と書いたわりに文句多いな…。木皿泉さんのインタビューも良かったですよ。
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